経営者の最低限の仕事は会社の存続であると考えます。この仕事は最高ではなく最低限の仕事です。経営とは、その為に自分の人生と尊厳を掛けて臨むに値する仕事だと考えています。昨年末にその考えを改めて認識する出来事がありました。
昨年末に私が尊敬していた経営者が破産手続きに入りました。つまり、会社が倒産したということです。あくまでも聞いた話でありますが、社員の給料は未払いになっていたそうです。その人物のこれまでの言葉や行動を振り返ると、このような場合は「自分の私財を処分してでも払うべき」と言っていたはずだが、現実にはそのようにはならなかったようです。酒の席での話を思い起こすと、他社の結果に対しては強い口調で非難していたのに、これまでの全ての言葉が嘘だったような気分です。これから破産処理が進む中で、どのような答えを出せるのか…注視していこうと思います。
倒産の事実を知った翌日の朝礼では、私は社員へ向けて以下のような話をしました。
「この件を対岸の火事や他人事とは考えないで欲しい、どんな状況でも企業も社員も最悪のリスクを想像して対策を講じて欲しい」と。
幸せなことに当社は債務超過ではありません。そのため清算や売却が可能な状況であるが、常に最悪のシナリオを想定することは必要であると考えています。私が経営のトップにいて、仮に3期連続の赤字を出すような事態があれば、私は即刻辞任する覚悟をしています。その際にはあらゆる選択の余地が残されているうちに経営陣の一新や企業売却を含めて決断をしなければならないと心に決めています。
私は経営者として「本物」に少しでも近づきたいと考えています。逆に言えば「偽物」になりたくないという事です。これまでの自分自身の言葉や行動を振り返れば、とても優秀な経営者でもないし、「本物」には程遠いことは良く自覚しています。沢山の過ち、沢山の無駄、沢山の嘘を繰り返し、多くの人々に迷惑をかけてきました。その中から僅かな反省と学びを得ることが重要なことだと思います。きっと最後まで「本物」になることは出来ないかもしれないが、自分の最後の幕引きだけは正しい決断をして「本物」への扉をとざしたくないと強く考えています。